2020年06月27日

『近代日本のどん底社会』

 草間八十雄著・磯村英一監修・安岡憲彦責任編集『近代日本のどん底社会』(1992年)を読む。
 550頁の大著。新型コロナウィルスの影響で、孫が我が家に来てパソコンを使用するので、それならばということで、読みふけった。こうして、読了するのに、8日間を要した。

 難解な本ではない。明治後期から昭和初期までの(特に、関東大震災後から昭和五年まで)の売春・貧民の生活が克明に記されている。
 社会主義イデオロギーの書ではないし、弱者救済直訴の書でもないし、政治政策批判の書でもない。文献に基づき、資料に基づき、自ら行った調査に基づき、淡々と記録・記述した書である。データ数値もひっきりなしに表れるし、観察調査や聞き取り調査もある。
 しかし、単なる調査データの提示ではない。社会政策のための弱者救済のための実証主義に徹した貴重な調査報告書である。
 マクロな視点からのミクロな分析の本書の主人公は、時代そのものであり、時代のなかでほんろうされつつも生きて死んでいった人びとである。

 磯村英一監修であることがよくわかる。我が国におけるこうした類の最高の研究者は、「横山源之助(明治期)⇒草間八十雄(大正・昭和初期)⇒磯村栄一(戦中・戦後期)」である。
 ただし、本書の監修では、磯村は名前を貸しただけであろう。実際のすべてをやったのは安岡憲彦と思う。

 「目次」の一部を記してみる。
 「一 売られゆく女 「売られゆく女の稼高とその所得」「時代を通じてみる売笑制度」「売笑婦紹介制度と需要状態」「どん底の女の一生」「売笑哀史 埋葬娼婦 二万人」」。
 「二 どん底のくらし 「どん底生活に喘ぐ人々」「東京における細民の生活」」。
 「三 闇に漂う人びと 「闇底を漂う浮浪者の売淫と賭博」「星も凍る寒天下の野宿者」」。
 「四 どん底の子どもたち 「細民街の子殺しと乞食の子」「乞食芳公の結婚まで」」。 「五 犯罪の世相「生業の確定と結婚」「私と殺人魔川俣の関係」」。
 以上である。(2495)
posted by 矢島正見 at 17:45| 我流雑筆