2020年06月16日

続々『悪人列伝 中世篇』〈B室町時代〉

 「高師直」も悪人とは言えない。
 この時代の一番の悪人は後醍醐天皇である。才気があり野心に満ち、狡猾であり、なおかつ天皇であれば、こういう人間は悪人となる。60年間の戦国時代(南北朝時代)をつくった張本人である。
 次の悪人は足利尊氏である。源氏一族の高位というだけで、さほどの才覚はない。時代に乗っていたら支配者になっていた、というだけである。
 弟はよくできている。そして高師直・師奏兄弟もよくできている。しかも両者は正反対。対立するのは必然。それをうまく使いこなす才覚も度量もないのが足利尊氏である。結果は両者の対立であり、ぐらぐらと揺れ動く尊氏である。
 もし、尊氏に秀吉ほどの度量と才覚があったならば、弟師奏は豊臣秀長となり、高師直・師奏兄弟は竹中半兵衛・黒田官兵衛となったのではないだろうか。そしてその帰結として、南北朝という天皇家の分裂はなかったであろう。後醍醐天皇は幽閉され、その後、毒殺されていたであろう。60年間の戦国時代(南北朝時代)はなかったであろう。

 「足利義満」も、だらしなく軽率なだけである。大体、室町幕府自体がさほどの権力を有していたわけではない。領地も少ない。他の大名たちと比べて抜きんでていたわけではない。連合政権である。ただ、明との交易で巨大な利益を有していたに過ぎない。
 したがって、将軍個人に力量がなければ、幕府の弱体は当然である。そして足利義満には力量がなかった。応仁の乱を引き起こした人たちの一人としての悪人である。
 なお、日野富子も、「政子」のように政治権力を発揮させたのではなく、コツコツと金を稼いでいたわけである。つまりは、時代を顧みない自己本位主義の「ぜいたく病」であった。
 やたらめったら、ダメ人間ばかりである。『悪人列伝』ではなく、『無能列伝』である。平和時であるならば、それでもよかったのだが、大乱の時代では、「無能=悪人=破滅」にならざるを得ないのである。
 思うに、太平の世の権力者は幸せである。「苦しゅうない、近こう寄れ」なんてセリフを生涯に渡って言えた支配者は幸せである。(2491)
posted by 矢島正見 at 00:07| 我流雑筆