2019年10月14日

『おんな船』

 白石一郎『おんな船―十時半睡事件張』(第六弾)を読む。
 第五弾では、半睡は江戸福岡藩邸の総目付となり、黒田藩の中屋敷に住居を定める。よって、中屋敷のことはよく描かれている。
 この第六弾では、江戸深川小名木河岸に居を構える。ここに至って、ようやく江戸庶民の生活が描かれることになる。それぞれの巻で、書くネタや背景を考えてのシリーズものというのがよくわかる。
 しかし、この江戸もネタが尽きたのか、次の第七弾(シリーズ最後)では、福岡に帰る。第七弾はその道中記である。江戸に来た時は道中は省かれいたので、帰りに書くという次第だ。
 これが、水戸黄門漫遊記ならば、各巻で、好きなところを漫遊させて、膨大なシリーズになるのだが、そしてそれ故に、大マンネリに陥るのだが、白石小説ではそのようなことはない。

 「御船騒動」では、正月となり「(お仙は)ことしでたしか十八になったはずだ」というので、歳の数え方は「数え」であることがわかった。
 月は新暦であった。これは「叩きのめせ」でわかった。

 小説では、主人公は二十石三人扶持。ところが、藩の二百俵の損失を自己責任として払わなくてはならない。
 米の換算なのだが、「米一石が三俵制なので、米二百俵といえば約七十石である。一石金一両と見積もって七十両の大金となる」、「食録僅か二十石三人扶持の新九郎にとって三年分の俸給を投げだしても、まだ足りない」と、文中にある。
 この新九郎は「蔵前取り」と思われる。さもないとおかしいからだ。しかし、新九郎は蔵前取りにて二十石で六十俵、三人扶持として十五俵、計七十五俵もらっている。三年分では二百二十五俵となる。三年分の俸給ならば十分足りている。
ただし、米問屋・札差から手数料をピンハネされるので、両で換算すると、トントンになるのかもしれない。(2397)
posted by 矢島正見 at 01:09| 我流雑筆