2019年09月21日

『加害者臨床を学ぶ―司法・犯罪心理学現場の実践ノート』

 『加害者臨床を学ぶ―司法・犯罪心理学現場の実践ノート』を読む。
 少年鑑別所や刑務所で、長年現場を経験した方の総大成ともいうべき書である。素晴らしい本である。基本的な文献をすべて読み込み、多くの理論を習得しての論述展開がなされている。
 と、このように書くと、理屈の本かと、おそらく読む気にはならないであろう。ところが、こうした理論研究を土台としつつも、論述の中核は、自己の体験した臨床からの知見であり、ときに個人史である。
 したがって、実に読みやすい。読みやすいがゆえに、読者は、理解を深めることなく、読み進めてしまうという危険を犯しやすい本である。これは、中身があり、読みやすい本の欠陥である。中身がないのに難しく書かれた本は、一字一句読むのであるが、そして最後には落胆するのであるが、こういう本は、その深さがわからないままに、「面白かった」で終わってしまう危険性がある。
 体験的記述が描かれているにもかかわらず、しっかりとした理論がその背景にあるのである。言い換えれば、理論に基づいて書かれているのではなく、体験を通して、理論を検証し、理論を超えて現状を把握している本である。その点、理論の、そして臨床の反省の書である。(2389)
posted by 矢島正見 at 13:30| 我流雑筆