2019年07月27日

『春燈』A/3

 『櫂』に比べると『春燈』は読みやすい。内容が読みやすいというのではなく、物語の展開が早く、テンポがよく、読者を意識した展開となっているからだ。作家としての宮尾登美子が円熟化してきているのだと思える。
 したがって、『櫂』では、いらいらしながら苦痛をもって読んでいったが、『春燈』ではあきれ返りながらも次の展開を期待しながら読んでいくことが出来た。
 読み始めてから読み終わるまで長い期間がかかったのは、ひとえに私個人が忙しかったからというに過ぎない。
 『櫂』が母(喜和)の視点・認識・感情からの描写で話が進んだのに対して、この『春燈』は、娘(綾子)の視点・認識・感情からの描写で話が進んでいく。その点、喜和善人・岩伍悪人という設定は相対化されていて、読んでいて抵抗感が薄れ、私にとっては読みやすくなっている。
 『春燈』の物語の軸は、綾子(娘)対岩伍(父)であり、綾子にとって、物語の初めから終わりまで最大の敵として描かれている。
 綾子の幼少時から数えで19歳の3月(満であるなら、17歳か誕生日が来ていれば18歳)まで、結婚直前までの綾子個人史である。(2371)
posted by 矢島正見 at 14:56| 我流雑筆