2018年12月31日

『放浪記』B/8

 貧しい、惨め、死にたい、男に捨てられた、等々が告白調に書かれているが、飢えて乞食になるほどではないし、売春宿や街路で身を売るというわけでもない。しかも、そうした人生を歩むことを軽蔑する。かといって、女工となり、単純作業に明け暮れるという地道な人生も嫌悪する。その点は、やたらとインテリの顔がちらつく。「詩人」というプライドがちらつく。
 後半では、わずかながらも原稿料を得ており、若い詩人たちとの交流もある。作家として若いころ貧しい暮らしをしていたということかと、客観視すると貧困の叫びもややしらける。
 「なんだ、売れない詩人の日記か」「何時まで文学にしがみついているのだ、貧しいのは自業自得ではないか」と思うのであるが、満で19歳から23歳の極貧階層出身の文学を志す少女、ということを考えれば、こうした生活も納得し得る。
 売れない文学少女の極貧生活自分史である。(2304)
posted by 矢島正見 at 00:45| 我流雑筆