2018年05月26日

山本周五郎『赤ひげ診療譚』

 『赤ひげ診療譚』を読んだ。黒澤明監督による映画『赤ひげ』で有名な小説である。映画のほうは何度か観たのだが、原作は読んだことなかった。
 小説も映画同様、いくつかの短編の連作形式によって、構成されている。ただし、8つの短編があり、そのすべてが映画に登場しているわけではない。映像化しやすい物語が映画では取り上げられている。
 また、原作にほぼ忠実に再現されているものもあれば、かなりの訂正がなされているものもある。映画を想い出しつつ読んでいった。
 一家心中の物語は、映画でも大げさであったが、小説ではさらに大げさである。長屋の古い板塀の板を子どもが盗んだということでの一家心中である。
 私の子どもの頃は、冬になると悪ガキたちが近所の崩れかかった板塀をはがして焚火をしたものである。そうなると、隣近所皆一家心中である。小説は昭和33年のもので、時代的に、私の子どもの頃よりもずっと新しい作品である。その時代、子どもの古板塀窃盗で一家心中というのは考えられないことである。
とにかく、山本周五郎らしいヒューマニズムにあふれている小説であり、黒沢もその点はきちんと押さえて映画化している。山本と黒沢は、基本的に同じイデオロギーの持ち主てあったことが理解される。〈芸術性豊かなヒューマニスト〉といったところか。(2226)
posted by 矢島正見 at 12:30| 我流雑筆