2018年01月17日

織田作之助『夫婦善哉』

 かなり以前に読んだものの再読である。
 織田作之助の小説が描く時代は大正から昭和の初めにかけてのことである。場所は大阪。焦点化すれば船場・難波等のミナミである。『夫婦善哉』では主人公の男はぼんぼん、女は芸者。この取り合わせで物語が展開していく。
 織田の作品には、モームのような、プライドを持った紳士の自己解放への途・没落への途はない。疑心暗鬼・憤怒などという激しい感情もない。道徳―反道徳、旧時代―新時代の対立という図式もない。
 最初から最後までダメな男の物語である。放蕩息子の物語であり、遊び好きで怠け者で小心者で見栄っ張りでお人好しで世間知らずの男の物語である。
 そんな男にあきれ返りつつも、何度も裏切られつつも、尽くす女の物語である。ダメ男を支配し管理する女ではなく、自ら働きダメ男を支える女の物語である。
 しかし、織田には太宰のようなうじうじしたところがない。けろっとしている。ダメな男のくせにいやに自己肯定感が強い。(2164)
posted by 矢島正見 at 23:38| 我流雑筆