2020年08月15日

『ビジュアル パンデミック・マップ―伝染病の起源・拡大・根絶の歴史』

 長男に、ウィリアム H.マクニールの『疫病と世界史(上)(下)』を貸した。それを返しに来た長男が、サンドラ・ヘンペルの『ビジュアル パンデミック・マップ―伝染病の起源・拡大・根絶の歴史』を貸してくれた。

 なかなか面白い本である。今現在(2020年8月)、かなりの疫病関係の本が出されているが、その中の一冊である。総カラーページのかなり豪華版の本ではあるが、2600円+税と、随分と安い。発行部数が多いのだろう。内容はカテゴリー分けした20の伝染病の「起源・拡大・根絶の歴史」である。
 ヘンペルの原本が2018年に出版されているので、新型コロナウィルスのことは描かれていない。「SARS」「ジカ熱」「エボラ出血熱」までである。

 知らないことも随分と書かれており、今一つ知識が増えた感じである。ただし、すぐに忘れてしまうことと思うが。
 その一つは、「梅毒」である。最初の梅毒は感染率も致死率も高く、短期で死亡するという疫病だったという。それがその後穏やかになったという。ということは、梅毒が日本の入ってきた頃は穏やかになった頃だったのだろう。

 「腸チフス」は「発疹チフス」とは、別立てで書かれている。しかし、「パラチフス」はない。ネットで調べてみると、同じような菌である。
 また、「赤痢」はあるが「疫痢」はない。これもネット検索だが、「赤痢のうち、小児にみられる重症型のもの」を「疫痢」と言うとのこと。

 本書から、私としての世界10大疫病を挙げるとすれば(順位に関係なく列挙すると)、「コレラ」「ペスト」「結核」「赤痢」「麻疹」「腸チフス」「天然痘」「ジフテリア」「マラリア」「インフルエンザ」ではないだろうか。

 さて、本書について、いささか批評するならば、訳者による解説が欲しかった。時代の流行に乗って慌てて出版したことと思うが、やはりきちんとした解説が必要である。
 そのなかでは、本書が感染経路(空気感染、水系感染、動物由来感染、人的感染)で分類されているので、疫病発祥の歴史別・地域別の整理をしていただけたら、もっとわかりやすかった。
 また、コロナウィルスに関してのごく簡単な解説を書いていただきたかった。

 なお、疫病の社会史に興味のある方は、まずは、古典中の古典であるマクニールの『疫病と世界史』をご一読いただきたい。決して簡単に読めるものではないが、素晴らしい本である。(2514)
posted by 矢島正見 at 00:13| 我流雑筆