2020年08月13日

『空気の底』

(1968年から1970年にかけて、『プレイコミック』にて連載された。)

 手塚作品がさらに続く。お付き合いのほどお願いしたい。
 『空気の底』には、14の短編が掲載されている。すべてが青年・成人漫画であり、そのすべてが高い水準の作品である。手塚によくある正義の政治性がまったくなく、最後の「あっ」と言わせるストーリー展開はまさにヒッチコック並みである。

 「うろこが崎」や「猫の血」などは、最後の一つの画そのものがすごい。ヒッチコックの『サイコ』そのものである。また、「ふたりは空気の底に」は『火の鳥』に登場してもおかしくない。そして、「嚢」はのちの『ブラックジャック』である。

 手塚は長編よりも短編のほうが良い。短編の名手である。テレビアニメでも、年に一回、正月にでも手塚アニメ特集をテレビ局が組んで、一年間かけて完璧に出来上がった数本の短編を放映したならば、画期的な試みであったはずである。手塚アニメは大成功したはずである。
 しかし、結局は、テレビ局によって潰され、駄作化してしまった。時代に生きた人の宿命であろう。(2513)
posted by 矢島正見 at 23:27| 我流雑筆