2020年05月17日

『悪人列伝 古代編』@/4

(注:このシリーズの本は昨年の秋に読んだものである。随分と遅れて、ここに掲載する。他に掲載することが、次々に出て来てしまったが故である。)

 海音寺潮五郎『悪人列伝 古代編』を読む。6本の短編が収められている。これで読むのは二度目である。
 海音寺潮五郎には、この『悪人列伝』(全四巻)と『武将列伝』(全五巻)がある。海音寺は最初に『武将列伝』を書き、次に『悪人列伝』を書いたのだが、私が読んだのはその逆で、『悪人列伝』を読み、次いで『武将列伝』を読んだ。
 いや、その前に読んだのが『日本名城伝』である。海音寺潮五郎の小説を読んだのはこれが最初であった。そのとき、今まで読んだ歴史小説とは全く違った新鮮さを覚えた。

 これらの小説を海音寺潮五郎は「史伝」と述べている。この史伝に近い歴史小説を書いている日本の作家としては、私の知る範囲(ごく狭い範囲)では、森鴎外、司馬遼太郎、新田次郎、吉村昭がいる。また、歴史小説とはやや質を異にするが(「私小説」のジャンルに入るのだろうが)、今三人、『戦艦大和の最後』の吉田満、『野火』『俘虜記』の大岡昇平、『朱夏』の宮尾登美子を挙げてよいだろう。

 この『悪人列伝』は実に読み辛い。読み易さにすると、第一に『日本名城伝』、第二に『武将列伝』、最後に『悪人列伝』である。なかでも、『悪人列伝 古代編』は特に難解である。
 登場人物が似たような名前なので、混乱して来るし、ふりがながなければ全く読めない名であり、人物の関係が入り組んでいる。それを整理しながら、またいくつかの挿入記述や歴史の解説を読みながら、読み進めていくのである。まさに「史伝」であり、専門学術書以上の読解力と忍耐力を要求されるのである。(2480)
posted by 矢島正見 at 14:06| 我流雑筆