2019年06月14日

『変身』@/3

 カフカ『変身』を読む(注:この小説を読んだのは2月前半のことである。)。
 ある日、グレーゴル・ザムザは、目を覚まして、自分が巨大な虫になっていることを発見する。鎧のような固い背、アーチのように膨らみ、横に幾本かの筋のついている褐色の腹、何本もの細い足の虫である。

 「巨大な虫」とは、おそらくグレーゴルほどの大きさであろう。私のイメージとしては、百足とゴキブリを足して2で割ったような感じである。カフカはこの虫の絵を描くことを拒否したという。それは正解であった。ビジュアル化したら、たちどころに、「何だこんな虫か」ということになる。ここは読者の想像に任せるしかない。

 しかし、文章では「発見した」とある。つまり、この巨大な虫はグレーゴルの自己認識である。父も母も妹も、グレーゴルが虫のようになったという意識は持っているが、それでも、その虫を「息子・兄」と認識している。したがって、グレーゴルが変身してしまったことは確かだが、グレーゴルの描く虫とは限らない。いや、上記のグレーゴル自身が発見した虫であるならば(つまり、完全な虫であるならば)、父も母も妹も決して「息子・兄」と認識し得るはずがない。もしかすると虫には顔が付いていて、顔はグレーゴルそのものだったのかもしれない。
 とすると、顔はグレーゴル、躰はゴキブリ、脚は百足、ということになる。これですっきりする。(2358)
posted by 矢島正見 at 15:11| 我流雑筆