2018年12月10日

『エロ事師たち』

 野坂昭如の『エロ事師たち』(1966年)を読んだ。最高の出来である。氏の処女作であることもすごい。時代は東京オリンピックの1964年、舞台は大阪。
 独特の文体が内容と実に一致している。最初読み辛いが、読んでいるうちに慣れてくる。そして好きになる。その点では谷崎潤一郎の文体と同じである。
 野坂昭如では『火垂るの墓』『アメノカひじき』等々を読んだが、これが一番であろう。1970年代以降になると、文体だけが突出して、面白くなくなっていく。そしてエンターテナーとして活躍していく。
 『エロ事師たち』以外では終戦直後を描いた作品とミウチのことを書いた作品とエロの作品が光っている。
 『エロ事師たち』の映画(1966年)は大学生時代に観た。未だに覚えている。監督は今村正平、名監督である。この頃の監督はすごかった。正直、映画が斜陽産業となり、テレビが低俗化してからは、ろくな監督しか出ていない。山田洋二が最後である。
 さて、「スブやん」に小沢昭一、女房の「お春」に坂本スミ子、「お春」の連れ子でスブやんをスケベおやじとしか見ていない高校生に佐川啓子、撮影・映像編集担当で相棒の「伴的」に田中春夫、処女紹介業の「処女屋のおばはん」にミヤコ蝶々、「クロ」に殿山泰司、その娘の「シロ」に桜井詢子、その他、菅井きん、二代目中村鴈治郎、等々、キャストがすごい。
 内容は小説とはいくらか異なるが、映画も実にいい。特に、小沢昭一と坂本スミ子が良かった。なお、「恵子」役の佐川啓子、「シロ」役の桜井詢子は知らない。ネットで調べてもわからない。佐川はグレた娘役で、グラマーで色っぽかった。桜井はシロクロショーの精薄の少女役で、これも可愛かった。小説としては傑出した出来栄えであり、映画としても名作である。(2298)
posted by 矢島正見 at 23:24| 我流雑筆