2018年09月28日

『土』C

 漱石は、このような小説家は日本では一人もいないと書いている。文庫本(新潮社、昭和25年)の解説者・和田伝もそのように書いている。確かにいないであろう。
 私のごく狭い読書歴の範囲に限定して思い浮かべてみると、田山花袋(特に『田舎教師』)、有島武郎(特に『カインの末裔』)、大岡昇平(特に『俘虜記』『野火』)、北杜夫『楡家の人々』、そして新田次郎、吉村昭と浮かんでくるが、違う。自然主義・写実主義・実写主義等という表現次元のイズムでも違いがあるし、極貧の人々の世界や時代性にも違いがある。せいぜい近いのは戦前の極貧の小作農を描いた『カインの末裔』程度であろう。外国では、パールバックの『大地』以外は思い浮かばない。(2272)
posted by 矢島正見 at 22:23| 我流雑筆