2018年02月10日

『西郷どん』はフェイク山盛り

   時代考証家が自らツッコむ『西郷どん』はフェイク山盛り(1/28(日) 11:01配信)

 「1月7日、ついにNHK大河ドラマ『西郷どん』が始まった。林真理子氏の小説が原作、『花子とアン』などで知られる中園ミホ氏が脚本。」
 「明治維新の英雄・西郷隆盛を鈴木亮平(34)が演じるが、「史実との違いを探せばきりがありません」と語るのは、鹿児島・志學館大学の原口泉教授(70)だ。」
 「『翔ぶが如く』(1990年)、『篤姫』(2008年)などの大河に携わり、『西郷どん』でも時代考証を担当。その原口教授自ら、史実との違いをツッコんでくれた。」

【フェイク1】西郷隆盛と主君の出会い
「第1回の放送で藩主・島津斉彬(渡辺謙)がお忍びで薩摩へ帰り、幼少期の西郷隆盛と出会います。しかし、当時斉彬が住む江戸から幕府の許可を得ずに帰るのは、不可能に近い。」
 「史実ではないので、『天狗』に化けて子供の西郷に会う、というような演出になっています。誤解がないように、番組の最後で、『このとき斉彬が薩摩に来た記録はありません』とナレーションを入れてもらっています」
【フェイク2】西郷は下戸
 「主君・斉彬と西郷が飲み明かすシーンもあるが、「西郷は下戸です」。」
【フェイク3】西郷家と大久保家の場所
 「大河では、西郷家と盟友・大久保利通(瑛太)の家が隣同士という設定だ。
「実際には、150メートルほど離れていました」
【フェイク4】「妙円寺詣り」は夜
 「島津義弘の武勇を偲ぶ地元行事、「妙円寺詣り」も描かれている。
「これは本来であれば、夜間におこなわれる行事です。キャストの小学生が夜のロケに出られないので、昼間に撮り終えたと聞いています」
【フェイク5】糸子は幼馴染みではない
 「西郷は3人の妻を娶っている。3番めの妻が糸子(黒木華)だ。
「2人が幼馴染みという設定も史実に反します。脚本の中園ミホさんが『2人は子供のときに会わせたい』との希望でしたので、『まあ、いいでしょう』と」
【フェイク6】月照と西郷の関係
 「林真理子氏の原作で、話題を呼んだのは僧・月照と西郷の関係だ。主君の斉彬を亡くし、絶望のあまり切腹を図る西郷を、月照が夜具に誘って慰める。尾上菊之助が演じる月照とのシーンは、どう描かれるのか……。
「2人の関係を、林さんは『ボーイズラブ』とおっしゃっていますが、私は月照と西郷は『一心同体』だったと思います。斉彬の君命を受けた西郷と、孝明天皇の勅命を受けた月照は、まさに志をひとつにしていた。男と男、男と女の愛など超えていたのです」
【フェイク7】糸子の奄美大島訪問
 「物語の中盤で、妻・糸子が奄美大島に渡り、西郷の2番めの妻・愛加那(二階堂ふみ)とその息子・菊次郎と会う場面がある。」
 「時代考証の立場からは史実と違うと言いました。ですが、林さんはドラマ上、糸子と愛加那に、女同士で話をさせたかったと。これは歴史小説やドキュメンタリーではなく、新しいジャンルの物語だと思っています。あくまで西郷という人間を描いているのです」

 「物語のプロット作りから参加した原口教授は、『西郷どん』で新しい西郷像を描こうと試みた。明治維新後、征韓論で敗れ、大久保と対立した西郷は下野して鹿児島に帰る。世にいう明治六年の政変だ。」
「私の見方は違います。西郷は大久保と対立したわけではありません。大久保は、内務卿として殖産興業政策を進め、かたや西郷は鹿児島で『農による国興し』を目指した。西郷にとっては、この上なく幸せな時だったはずです。」
 「『西郷どん』の裏番組は、高視聴率を誇る『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)だ。」
 「ぜひ、そういう番組を観ている若い人に観てもらって、新しい国づくりに役立ててほしいですね」
 「新たな西郷像が楽しみだ。」
(週刊FLASH 2018年1月16・23日合併号)最終更新:1/28(日) 11:01 SmartFLASH

 思ったとおりである。どおりでおかしいところが多いなと思ったし、そのおかしいところがまた面白くない。本屋でパラパラと立ち読みして、原作も面白くなさそうだったが、それ以上につまらなくしているのはどうやら脚本家にあるようだ。原作が女、脚本家が女では、女好みの物語になるであろう。中年以上の男が面白いわけない。
 時代考証次元でのでたらめがこれほどあるのだから、考証にはひっかからない心情的・人間関係的場面では、どれほど時代性を無視して現代人好みと化していることだろうか。
 『真田丸』が面白くて、『井伊直虎』がつまらなかったのは、主人公が女だったからではなく、脚本がつまらなかったからだ。「新たな西郷像」などまったく期待できない。
 「新しいジャンルの物語」とは言うが、〈ベルバラ版大河ドラマ〉ではどうしようもない。若い男女を集客したいのであれば、「精霊の守り人」の続版を作ることだ。
 「私の見方は違います。西郷は大久保と対立したわけではありません。大久保は、内務卿として殖産興業政策を進め、かたや西郷は鹿児島で『農による国興し』を目指した。」という時代考証担当の原口教授の観方のほうがまだ面白い。重商主義対重農主義の対決が描ける。日本国に対する諸外国資本支配への危機、輸出用作物の農業化による農民の貧困化問題、日本の帝国主義化路線問題、等々、面白く描けると思うのだが。
 私が原作者で脚本家であったならば、徹底的にその時代そのものを描く。マクロ次元の経済・政治・生活を中心に描く。歴史考証は当然のこと、喜怒哀楽の意識、人間関係、状況認識に至るまで、徹底して、その時代そのものを淡々と演出する。(2177)
posted by 矢島正見 at 13:44| 我流雑筆