2018年01月28日

都々逸を一つ

 織田作之助『女の橋』から都々逸を一つ。
「七つ八つから いろはを覚え はの字忘れて いろばかり」(2171)
posted by 矢島正見 at 15:55| 我流雑筆

織田作之助『女の橋』『船場の娘』『大阪の女』

 三部作である。小鈴⇒雪子⇒葉子の三代記。芸者の女、芸者の妾の子どもの人生行路である。
 三人の女に意気地のない男が絡まるのは織田小説の特徴。ただし、織田の描く女はたくましい。男のような軽薄・能天気ではない。世間のしがらみのなかで惨めではあるが生き抜いている。しかも、最後の葉子には期待を持たせて終わらせている。(2170)
posted by 矢島正見 at 15:54| 我流雑筆

織田作之助『放浪』

 二人の兄弟の人生行路である。重苦しい人生を喜怒哀楽もなく淡々と書き進めているところがいい。モームのように感情を大げさに書いていくよりも、こうした書き方のほうが、私としては悲惨さが伝わってくる。
 『夫婦善哉』よりも、こちらのほうがイライラせずに読める。『夫婦善哉』は、男のだらしなさにもイライラするが、それを支える女にもイライラさせられる(2169)。
posted by 矢島正見 at 15:52| 我流雑筆

2018年01月27日

「別格」大寒気

 50年ぶり近い寒気が日本を襲った。一晩だけでなく、5日間続いた。日本全国をほぼすっぽりと包み込んだ大寒波だ。
 25日は都心で−4度だったという。その後も−4度、−3度と続いた。NHKのニュースでは「別格寒気」と言っていた。すさまじい寒気だ。
 子どもの頃の記憶では、軒下につららが垂れ下がり、水たまりが凍り、バケツの水が凍り、水道が凍り付き、風呂屋の帰りに手ぬぐいが凍ってしまったが、それと同等か、もしくはそれ以上の寒気である。実に久しぶりである。(2168)
posted by 矢島正見 at 11:33| 我流雑筆

雪見酒

 久しぶりに大雪となった。午前中出かけたが、午後早くに帰って来たので、帰路に別状なかった。
 夜、食後にシャッターを開けた。庭一面の雪である。ウッドデッキに雪、柿の木に雪、竹林に雪。
 竹林の十本近い竹が雪の重さでウッドデッキに覆いかぶさるようにしなだれて、そこに雪が積もり、横四メートル・高さ二メートルほどの小山を作っていた。
 室内を暗くして、「香炉峰の雪」とばかりに、雪明かりの中の風情に浸りながら、ちびりちびりと飲み始めた。(2167)
posted by 矢島正見 at 11:30| 我流雑筆

2018年01月21日

織田作之助『俗臭』

 没落した商家の7人姉妹兄弟の人生行路が、長男の権左衛門を中心に描かれている。面白いことに、これはハッピーエンドで終わっている。それ故に題名が『俗臭』かと、穿って勘繰りたくもなる。(2166)
posted by 矢島正見 at 17:27| 我流雑筆

2018年01月20日

NHK大河ドラマ『西郷どん 第二回』

 NHK大河ドラマ『西郷どん 第二回』を観た。借金の形に売られていく少女を西郷が懸命に救おうとする、島津斉彬への建白書なるものを渡すことさえできずに奮闘する、というそんなストーリーだ。
 なんとも違和感を覚えたのだが、視聴者の大半は素直に感動したのではないだろうか。そこが脚本家の狙いであろう。
 西郷に関しての歴史的史実として、こうしたことはおそらく記されていないはずである。原作者の、もしくは脚本家の挿入ストーリーであろう。
 いたいけない少女が身売りされる、これだけでなぜか現代人は世界的に「大変なことだ」「悲惨なことだ」と心を動かされるようだ。性の問題と子どもの問題がセット化すると、人びとは大いに問題視する。
 従軍慰安婦問題も、戦時下の兵隊相手の売春問題というのでなく、売られて性の奴隷とされた可哀想な少女、という観念で思考されがちである。一部の人たちにとっては、数万人の兵隊が殺されるよりも多くの涙を誘うようだ。
 こうした現代の傾向をうまく利用して、視聴者サービスを行い、視聴率を上げようとしたのが今回の『西郷どん』であると、批評せざるを得ない。一回目がいくらか面白かったので期待したのだが、がっかりした。
 この頃(江戸時代末期)、貧農の女子は12−3歳ともなれば、ほぼ奉公に出される。借金があろうとなかろうと。口減らしである。前金は親がすべて取る。少女を売るのは親である。こんなことは戦後の昭和20年代まで続いていたことだ。何も特別なことではない。下級武士(郷士)生まれの西郷にとっては、見なれた・聴きなれた、自明のことであったはずだ。
 もし、外国に支配されたら、日本の農民はさらに悲惨な状況に陥る。だからこそ、時代を変えなくてはならない、というストーリーでなくては、感心しない。これでは逆に若き日の西郷の目先に囚われた認識スケールの貧弱さを提示しているようなものである。
 もっとも、その後島津斉彬の薫陶を得て、自己を反省し、スケールの大きな視座を獲得するという展開であるならば、別だが。
 なお、隠し田畑はよかった。あのようなことは多くの農民がしていたことだ。理解ある武士は、知りつつ知らないふりをしていたことと思う。(2165)
posted by 矢島正見 at 09:50| 我流雑筆

2018年01月17日

織田作之助『夫婦善哉』

 かなり以前に読んだものの再読である。
 織田作之助の小説が描く時代は大正から昭和の初めにかけてのことである。場所は大阪。焦点化すれば船場・難波等のミナミである。『夫婦善哉』では主人公の男はぼんぼん、女は芸者。この取り合わせで物語が展開していく。
 織田の作品には、モームのような、プライドを持った紳士の自己解放への途・没落への途はない。疑心暗鬼・憤怒などという激しい感情もない。道徳―反道徳、旧時代―新時代の対立という図式もない。
 最初から最後までダメな男の物語である。放蕩息子の物語であり、遊び好きで怠け者で小心者で見栄っ張りでお人好しで世間知らずの男の物語である。
 そんな男にあきれ返りつつも、何度も裏切られつつも、尽くす女の物語である。ダメ男を支配し管理する女ではなく、自ら働きダメ男を支える女の物語である。
 しかし、織田には太宰のようなうじうじしたところがない。けろっとしている。ダメな男のくせにいやに自己肯定感が強い。(2164)
posted by 矢島正見 at 23:38| 我流雑筆

2018年01月13日

深沢七郎『笛吹川』

 傑作である。
 戦国時代、武田家三代にわたる栄枯盛衰の歴史の中で、甲斐の笛吹川の川辺に住む貧農の親子三代が生き抜いた、そして殺されていった一族史である。
 感情を押し殺し、淡々と書き綴った小説には、すごみがある。近年は、大げさな表現がはやっているようだ。ニュース番組では「あってはならないことが起こりました」と、始まった途端に、ニュースキャスターが悲痛な面差しを浮かべて述べる。地球上では、「あってはならないこと」など、毎日・毎時のように起こっているのだ。
 深沢は、そうした悲惨さを戦国時代という歴史を背景として、いぶし銀のような筆で書き綴っている。(2163)
posted by 矢島正見 at 14:30| 我流雑筆

「晴れ着トラブル」から

<晴れ着トラブル>被害総額は数千万円か 東京と神奈川(1/9(火) 11:37配信)
「「はれのひ」に注文したため、姉の晴れ着を借りるほかなく式には間に合わなかった。」
「晴れ着のレンタル・販売会社「はれのひ」(横浜市)と契約した新成人に振り袖が届かず、連絡が取れなくなった問題で、神奈川県内の警察署に「代金を払ったが店と連絡が取れない」などの相談が少なくとも60件寄せられた。被害総額は東京都内も合わせると数千万円に上る可能性もあり、神奈川県警は実態把握に乗り出した。」

 成人式の日に晴れ着が届かずに成人式に出られなかったという。晴れ着を着ないと出られないということだ。マスコミでは悲劇として扱っている。しかし、何故、成人式を行政が主催するのか。そうした根本的疑問が欠如している。
 正月の祝・盆暮の儀式、誕生祝、七五三の祝、結婚式、出産祝、還暦・古希記念、葬式、これらすべて家族が中心となって行われる。入学式・卒業式は学校が行う。それなのに何故、成人式だけ行政がでしゃばるのか。
 成人式が出来たのは、政府が、「成人の日」を国の祭日として定めて、地方自治体が中心となって地域で式典を行うと定めたからだ。元来は一族が同族の若衆に対して行なっていた元服を、国策として定めたことから始まったのである。昭和23年のことであり、昭和24年からこの施策として第一回の成人式が挙行された。
 家族・一族は無視され、式に出席すらできず、地域行政のお偉方が壇上を占め、「お父さん・お母さん、ようやく大人になりました」と感謝する間もなく、粛々と式は執り行われていく。そうした本質的なことを、も少しマスコミ・ジャーナリストは問題化すべきではないだろうか。
 もし、七五三を、親を無視して、行政主体で行ったとしたら、いったいどうなっていくのか。もし結婚式が行政主体で行われたとしたら、人びとはどう反応するだろうか。それと同次元のこととして捉え、問題とすべきである。(2162)
posted by 矢島正見 at 11:50| 我流雑筆

羽生氏、国民栄誉賞受賞

羽生善治氏、国民栄誉賞受賞。おめでとうございます。
 将棋ファンにとっては実に嬉しいことである。(2161)
posted by 矢島正見 at 00:06| 我流雑筆

2018年01月08日

「求人倍率、1.55倍に上昇=43年9カ月ぶり高水準―10月」より

「求人倍率、1.55倍に上昇=43年9カ月ぶり高水準―10月」より(12/1(金) 8:42配信)

「厚生労働省が1日発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.03ポイント上昇の1.55倍となり、4カ月ぶりに上昇した。1974年1月以来、43年9カ月ぶりの高水準。景気のゆるやかな回復を背景に、製造業を中心に幅広い産業で求人が増えたことが寄与した。」
「総務省が同日発表した労働力調査によると、10月の完全失業率(同)は2.8%で、5カ月連続で同水準だった。同省は「雇用情勢は着実に改善している」(労働力人口統計室)とみている。」
「求人倍率は、ハローワークに申し込んだ求職者1人当たりの求人数。9月まで3カ月連続で1.52倍の横ばいが続いていた。10月は求人数が1%増、求職者は0.5%減だった。業種別の新規求人数は、自動車や住宅関連を中心とする製造業に加え、人手不足が続く医療、福祉で大幅に増加した。」
「民間企業に勤める会社員やパート従業員が2016年の1年間に得た平均給与は前年比0.3%増の421万6000円で、4年連続増加したことが28日、国税庁の民間給与実態統計調査で分かった。男性の521万1000円(0.1%増)に対し、女性は279万7000円(1.3%増)だった。」
「女性の給与所得者数は前年比2.3%増の2007万人で過去最多を更新し、伸び率も男性(同1.1%増)を上回った。」
「雇用形態別では、正規雇用が486万9000円、非正規雇用は172万1000円。その差は314万8000円で、4年連続で格差が拡大した。」
「業種別では「電気・ガス・熱供給・水道業」がトップで769万円、次いで「金融・保険業」が625万円、「情報通信業」が574万円と続いた。最下位は「宿泊・飲食サービス業」の234万円。」

 実に景気のいい話である。産業界は押せ押せムードであろう。2018年になってからも、この調子は続いている。2018年度は明るい見通しだとう。安部内閣の支持率が低下しない最大の理由がここにある。
 マスコミでは、大半の人びとにまでこの景気は未だ及んでいない、との批判ばかりだ。しかし、肝心なところは、副作用の強い強力な薬を投与し続けての効果ということだ。デフレ脱却のためのゼロ金利政策・大量の紙幣・国債発行等の投与でかろうじて保っている政策ということだ。
 金利を1パーセントにまで上げたら、たちどころに絶望的な経済状況になるという未だ瀬戸際での回復というに過ぎない。(2160)
posted by 矢島正見 at 12:30| 我流雑筆

2018年01月07日

レスキューナウニュース〔交通事故死者〕より

〔交通事故死者〕2017年3694人 統計史上最少更新も、高齢者比率は昨年に次ぐ半数超
(1/4(木) 10:00配信)

「警察庁によると、2017年の全国交通事故死者(速報値)は累計3694人となり、前年比では210人減、現行基準の統計開始翌年の1949(昭和24)年の3790人を下回る、過去最少数となりました。」
「うち65歳以上の高齢者は累計2020人となり、前年比118人減となっていますが総数の54.7%を占め、同統計開始の1967(昭和42)年以降、2016(平成28)年の54.8%に次ぐ高い値となっています。」

 戦後最低の犯罪率、戦後最低の非行率、そして戦後最低の交通事故死率。実に最近の日本は平和である。にもかかわらず、犯罪は増加・凶悪化、非行も増加・凶悪化、交通事故死も増加・凶悪化と思っている人が大半である。
 マスコミとネットでの問題視化・騒ぎすぎ化・深刻な過剰コメントの帰結である。「統計史上最少更新も、高齢者比率は昨年に次ぐ半数超」というタイトルでもお分かりだろう。後半の部分で問題化を印象付けていることが伺える。
 なお、高齢者の死亡率が高い一因はもちろん少子高齢化であるが、今ひとつは子どもの死亡率の低下である。これは子どもに対しての交通教育・しつけがかなり行き届いたことの帰結であると推測し得る。

【交通事故死者数の推移】(人口10万人比)[うち高齢者]
・1948年  3848人( 4.93人)     現行基準の統計開始
・1949年  3790人( 4.74人)     過去最少
・1953年  5544人( 6.46人)     初の5千人台
・1959年 10079人(10.98人)     初の1万人突破
・1970年 16765人(16.35人)     過去最多
・1976年  9734人( 8.70人)[1782人]1958年以来の9千人台
・1988年 10344人( 8.46人)[2369人]再びの1万人突破
・1995年 12670人( 8.54人)[3240人]高齢者数過去最多、率も初の30%台に
・1996年  9943人( 7.92人)[3145人]1987年以来の9千人台
・2009年  4979人( 3.90人)[2483人]1952年以来の4千人台
・2010年  4948人( 3.88人)[2489人]高齢者率50.3%と初の半数超に
・2015年  4117人( 3.24人)[2247人]2000年以来となる対前年増加
・2016年  3904人( 3.07人)[2138人]1949年以来の3千人台 高齢者率過去最大の54.8%
     最終更新:1/4(木) 10:45  レスキューナウニュース(2159)
posted by 矢島正見 at 14:43| 我流雑筆

2018年01月04日

モーム小説の特徴

 秩序・統制・儀礼・規律 対 自由・解放・堕落という軸。
 白人(イギリス上流階層) 対 土人(南海諸島・東南アジア現地民)という軸。
 旧時代に生きる人間 対 新時代に生きる人間という軸。
 女(現状を生きる貴婦人) 対 男(堕落していく紳士)という軸。
 これらの軸の組み合わせから疑心暗鬼・憤怒・惨め・等のマイナス意識・感情が展開されていく。プラス思考はほとんどない。堕落していくのは新時代に生きる・アジアのイギリス植民地に生きる白人男である。
 こうした内容を推理小説としても読める巧みなストーリー展開で進行していくのがモーム小説である。
 さて、この辺でしばらくはモームから離れることにする。(2158)
posted by 矢島正見 at 23:41| 我流雑筆

『園遊会まで』

 これもボルネオ。アルコール依存に陥った男とその妻の話。今と過去の回顧が交錯しつつストーリーが展開される。一流の推理小説となっている。最後の展開はヒッチコックを想わせる。(2157)
posted by 矢島正見 at 23:38| 我流雑筆